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 第49回経営管理者講習会は、『情熱・こだわり 』と題し、 平成19年3月2日(金)、3日(土)と PC生産性国際交流センター(神奈川県三浦郡葉山町湘南国際村) にて開催しました。
  いまクリーニング需要の低迷に直面し、経営者として何を考え何をすべきかと考えると、やはり物作りにこだわり続けるしか生き残る術がないと実感して、 (株)ドトールコーヒー名誉会長である鳥羽博道氏をお招き出来ました。
 鳥羽氏は前日にパリから帰国したとのことで、ドトールコーヒーを後継に託し、ご自身は新しいビジネスモデルを立ち上げるべく、情報収集にパリに行かれたそうです。今度は「世界一のコーヒー」を作るべく銀座・三笠会館にサロンを作ろうとしているそうです。
 そんなお話に始まり、生い立ちや苦労話、そして経営哲学をお伺いすることができました。
  その受講内容と感想についてご報告いたします。
こだわりの品質・サービス・店作り ―ドトールコーヒー成功の原理・原則―
(株)ドトールコーヒー 名誉会長 鳥羽 博道氏
 至誠通天(しせいつうてん)―ある時父と喧嘩になり、父は日本刀を抜いて私を追いかけてきました。その日は裸足で15キロも逃げて、父の許には帰らないと決意し、高校を中退して、無一文で上京しました。実家には『至誠通天』の額があり、子供の頃からその書を見て育ち「誠は必ず天に通じる」と堅く信じていたのです。「金の貧乏をしても心の貧乏をするな」骨董商の父は、画家でもあり貧乏でしたが「金の貧乏はしても、心の貧乏はするな」と言い、心の貧乏な人は先に自分の利益を考える。心の豊かな人は先に相手の喜びを考える。これは人生において、雲泥の差になるというのです。
 赤面性がトップセールス―上京後、2、3の飲食店に勤め、引き抜かれてコーヒーの会社に入り、セールスマンになりました。しかし、赤面恐怖症で人前に出ると顔が真っ赤になるほど、セールスが苦手でした。そこで「うまく喋るよりも、相手のためになることをしよう」と思い、店に入ると何かできることはないかと探して、それこそ何でもやったのです。すると、1年間でトップのセールスマンになりました。
 そして19歳の時に抜擢されて、喫茶店の店長になり、その店のコンセプトは何かと考え「一杯のコーヒーを通じて、安らぎと活力を提供する」を考えたのです。これは現在のドトールコーヒーの使命と同じです。使命を作り上げる事がいかに大事かを、鳥羽会長から聞くとは思いもよりませんでした。
 「長の一念(ちょうのいちねん)」「因果具仁(いんがぐじ)」―喫茶店の店長からブラジルへ渡り、3年間コーヒーの勉強をし、日本に戻ってきます。そして24才でコーヒーの卸業を始めるのですが、数年は大変な思いをします。そればかりか、詐欺に遭い店を騙し取られ、仕方なく裁判になりますが、一銭のお金も戻らず大変な借金を背負ってしまいます。一時は心が荒れて、人を恨み、世を拗ねていましたが、こんなことでは自分が駄目になってしまうと、騙した相手を恨むよりも、何としても自分は成功して、その騙した人に「お元気ですか」と言える自分になろうと決意し、それから6年間、泥沼を這い回るように、頑張ったのです。
 その苦しい中で支えになったのがいくつかの言葉です。「長の一念」これは、すべては我に責任あり社員が数人、数十人、数百人、数千人になろうが、すべての責務は経営者にあるという一念です。そして「因果具仁」は「原因と結果は必ず一致するものだ」というお釈迦様の言葉で、「よい結果には必ずよい原因がある。そう考えたら今日一日、この一時間、一分、一秒も無駄にはできない。」と頑張ったそうです。
 不幸な人を作らないために―昭和47年、鳥羽会長はコロラドというフランチャイズを始めたのですが、そのきっかけは、ある未亡人が夫の生命保険金で始めた喫茶店を、いい加減な経営指導で失敗し、大変苦しんでいる様を見て「こんな不幸な人を絶対に作ってはいけないと思い」と、フランチャイズを始めたのです。
 当時の喫茶店は、同伴喫茶や美人喫茶など、半ば風俗化していましたが、人を退廃に導くのではなく、「健康的で明るく、老若男女ともに楽しめる店」というコンセプトで喫茶店を創りました。ここでも使命を作り上げてから商売をされているのです。
 鳥羽会長のお話には常にミッション・ステートメントが先にある事に驚きました。素晴らしい講演に身の引き締まる思いでした。
コーチング・スキル ―あなたにもコーチが必要です!―
(コーチ・エイ株) 石丸 賢一氏
 コーチAの石丸健一講師を迎えて、行われた第2講座は、経営管理者講習会としては、珍しい机を使わない形式での講演となりました。参加者同士がおしゃべりをしながらの会話の実験、参加者と講師の先生の掛け合い漫才のような実演で、全員参加の笑い声の絶えない楽しい講演会となりました。
  コーチングとは「相手の自発的行動を促すコミュニケーションの技術」です。というと難しいのですが、今まで、何気なく行っていた会話の中に表現、態度などのちょっとした工夫をするだけで、スタッフの長所を引き出すことが出来る事が実演・実験等を通して理解できました。
  「やらせる」のではなく「やってみたいと思わせる」話し方の入り口が見えてきた思いです。
  また、講演内容以外にも、手を必ず上げさせるための一工夫、参加者からの発言、提案を必ず講演内に取り込まれる石丸講師の講演の進め方を目の当たりし、会話というコミュニケーションの技術が、限りない可能性を持つことを、実感した講演でした。
リーダーの4つの役割 ―7つの習慣を組織に活かす―
フランクリン・コヴィー・ジャパン(株) 末光三樹男氏
 前回に引き続き「7つの習慣」から「リーダーの4つの役割」というセミナーを受けた。
●リーダーシップの4つのレベル
  リーダーシップの4つのレベル
  「7つの習慣」が個人と人間関係レベルでの効果性を高める内容であるのに対し(図のピンクの部分)、「リーダーの4つの役割」プログラムではマネジメント、組織レベルでの効果性に焦点を当てています(グレーの部分)。ここで私は「7つの習慣」が「個人のミッション・ステートメント」から始まる個人レベルの事であり、「リーダーの4つの役割」は「ドラッカーの5つの質問」から始まる会社・組織をとらえたものなのだと気づき、いままで釈然としなかった「個人と組織」の関係が明確になりました。
●リーダーシップとマネジメント
  リーダーシップとマネジメントは異なる機能であり、どちらがより重要であるとか、より上位に位置づけられるという性格のものではありません。 「リーダーシッブとは、ポジション(職位)につくものでは、あなたの“選択”にかかっている。マネジメントは大事だが、勝負はリーダーシップにある。〜ジャック・ウェルチ」。しかし変化の激しい現代において、リーダーシップの重要性がより高まっています。「ほとんどの組織はマネジメントのやり過ぎ、リーダーシップのなさ過ぎである。〜スティーブン・R・コヴィー」
●リーダーの4つの役割「方向性を示す」
  リーダーの4つの役割「方向性を示す」
  リーダーシップの第一歩は、変革の方向性を示すことである。その方向性から長期ビジョンや、変革を実現するための戦略が導かれる。ビジョンは、その企業に何らかの価値をもたらすものでなければ、彼らの共鳴を得られず、リーダーシップを発揮することは困難になります。「この激流の世界において、最も大切なことは変わらない価値観と原則を自分の中心に置くことです。それができていれば、周りの激しい変化に対応できるようになります。こうした原則の確立こそがリーダーに継続的なカを与えてくれます。〜スティーブン・R・コヴィー」
●リーダーの4つの役割「組織を整える」
  方向が設定されれば従業員をその方向に導き、ベクトル合わせをすることが必要になる。ここではビジョンや経営戦略を従業員のみならず社会に伝達し共感を得るためのコミュニケーションが重要となる。「行動はコントロールできるが、その行動の結果は“原則”に支配される。〜スティーブン・R・コヴィー」「あなたの組織は存在する権利を持っていない。〜ジム・スチュアート」「企業は、社会や経済に許しがあって存在しているのであり、社会や経済が有用かつ生産的な仕事をしていると見なす限りにおいて、その存在を許されているにすぎない。〜ピーター・F・ドラッカー」
●リーダーの4つの役割「エンパワーメントを進める」
  組織が整い、戦略目標を実現させようとする目的のためにどのように社員を配置し、どんな仕事をしてもらうか、また、そのために社員の能力をいかに高めるかが主要なテーマになってきます。エンパワーメントとは権限委譲などと訳されますが、現場の自主性を高め、パフォーマンス向上につなげるために権限を与える(Em+Power:パワーを与える)考え方です。多様化する顧客ニーズに迅速に対応し、的確な判断をするためにはエンパワーメントを進め、経営戦略や行動規範といった方針を会社全体で共有することが必要になってくるのです。
●「キーワード」
  今回学んだ中には「インサイドアウト」「変化」「原則」「選択の自由」など「7つの習慣」を学ぶためには、非常に重要なキーワードがありました。まだ理解いただいていない方々には、ぜひ復習して頂きたいと思います。
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